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竜の目にたされた点

企画を立てるというのは、とても、とても難しい。編集という職業に就いている以上、当然世の中に思うことはごまんとあるし、それを誰かに伝えたい。ところがそうした初期衝動だけで企画を立てると、返ってくる言葉は「ブログでやって」。

何か企画として成立させるには、いいたいことを商品として成立させる必要がある。商品として成立させる(パッケージ化)には、おもしろいと思ったものに、どんな意味があるのか、どう社会的な意義があるのかという要素を加えて、さらにだれがどういう風に求めているのかという他者の承認が必須の条件となる。

それは、一見衝動的にかき鳴らされているような音楽や小説、演劇などの表現行為にも、商品として貨幣活動の遡上に上がるものには、裏に表に組み込まている。

さて、シルバーウイーク、毎日仕事をしている最中、王子小劇場でやっていたスペースノイドの公演の千秋楽に滑り込めた。今回の舞台は、『哀愁の町に霧がほにゃらら』というタイトルの芝居で、2006年に初演を行った同名舞台の再演だ。

東京・練馬の石神井公演にあるアパートで、劇団「激弾スペースノイド」のメンバーが共同生活を行っていた。そんな石神井での日々をつづりながら、人生や夢といった少々青臭いテーマと対峙していく、という言葉にするとあっけないけど、芝居を優しく楽しく演じながらも、表現に対して鋭い視点で迫る青春演劇である。

再演ということで、メンバー個々の演技も格段に見世物として成長しているし、舞台美術に関しては、小劇場系の劇団という枠のものではないと思える。(※1↓)そしてなにより再演にあたって書き直されたであろう脚本が、この劇団を新しい舞台に押し上げているのだと僕は思う。

千秋楽を過ぎたのでネタバレを踏まえて書くが、劇中にあるアノころの状況を俯瞰する、「初期衝動を越えた書き手の居る劇団は、当然過渡期を迎えている」(うろ覚えですが)というセリフ、このセリフがあることで、初期衝動や、その延長で演じられていた初演――かっこいい男子たちが、じゃれあいながらさまざまな思いを抱え、青春を餌に熱く楽しく演じる芝居――から、パッケージとして、完全に成立させたものに芝居を変化させていた。言い換えると、これはもはや、小劇場系のいち劇団が演じるだけのものではなく、多くの人々が演じて、見て楽しめる芝居に昇華したということだ。

もちろん、初演の時点でも見る価値のある芝居ではあった。それは『ルーキーズ』のように、男子たちが単純に熱くも楽しい青春を繰り広げる様を見るというのは、例えば役者が一流の人たちが演じれば、もっともっと成立感が高いものになっただろうし、小劇場系の劇団シンパとしてほっこりと暖かい気持ちになれるものなのであった。

しかし、そういう芝居にすることはこの劇団の本意ではないだろうし、少なくとも演出家・御笠ノ忠次の本意ではない、というのは、劇中のセリフ「人を一人や二人拾ってきても大丈夫な劇団にする」からも分かることである。

では、「初期衝動を越えた書き手の居る劇団は~」のセリフが、なぜ、初演とは違い、この芝居を完全にパッケージ化させることに成功したのか。

そう思うのは、そこに『多くの人に見せる』という意識の変化を、垣間見たからからだ。それは劇中の語り口からして、解説的な一言だったことからもそう思う。(※2↓)初期衝動に裏打ちされた表現というものに対して離別し、“自分たちの物語”を俯瞰して、客観視することによって、青春という物語をしっかり一つ思想として昇華(パッケージ化)させている。“自分たちの物語”をパッケージ化させた、という行為こそが、初期騒動だけの表現から脱却し、人々に見せるエンタメへという意識の変化を表していて、新しい段階へと劇団を押し上げたといえるものになる。

初期衝動に裏打ちされて無い表現は信じない、という人がいるが、ぼくは初期衝動だけの表現も、また信じない。初期衝動は大事だけど、それを出来る限り多くの人に伝えたいという気持ちがないものは、やはりただの自慰行為なのだと思う。本当にいい作品は、誰もが楽しめるものになるはずだ。

そういう思いを含めて、今回の舞台はこの劇団を新しい領域に連れて行ったのではないだろうか。あとは、このパッケージ化がほかの作品でもしっかり見せてくれるかどうか、ですよね。

なんて書くと怒られるかもしれないですが、これをいまだ、ブログにしか書くことのできない、不甲斐ない自分にかつを入れたく、ここにこれを記します。

※1 ここの舞台美術は、毎回すごいんですけど、小屋によるんですよね。いい小屋をみつけてくれると嬉しい限りです。
※2 逆にあえて言えば、このセリフだけ芝居の中でめちゃくちゃ浮いていた。いわばここだけ、お芝居からはなれた神の手だったのでは、とおもう。
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by U-the-zannen | 2009-09-21 20:35



ポイズン過ぎるこんな世の中をただ反抗的精神のみで斬る、平成の切り裂きジャックの独り言
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